時事解説

中小企業の企業立地と海外生産拠点の国内回帰の現状と変化 その1

現代中小企業の立地戦略:内向き傾向とその背景

中小企業が直面する経営環境の変化は、企業立地戦略に大きな影響を及ぼしています。中小企業庁の「中小企業白書2023年版」によると、過去10年間で約26%の中小企業が工場や生産施設の新設・増設・移転を実施し、その大多数が本社所在地もしくは同一市区町村内での立地を選んでいます。特に小規模な企業ほど、地元密着型の立地を選ぶ傾向が強いことが明らかになっています。

海外からの国内回帰:その動因と現実

中小企業の海外生産拠点からの国内回帰も注目されています。2020年から2022年にかけて、海外で生産していた製品や部材を国内に戻した企業が一定数存在し、この傾向は今後も続くと予想されています。最初の動因は新型コロナ感染症への対応でしたが、最近では為替変動、人件費の上昇、原材料費の上昇など経済的な理由が主な要因になっていることが分かります。これらの要因は、国際経済の不安定性が中小企業の生産戦略に与える影響を示しています。

中小企業の将来展望:内向きからの脱却か、さらなる深化か

中小企業は、これからも地域密着型の立地戦略を続けるのか、それとも国内外の市場環境の変化に応じて柔軟に対応するのか、その方針が注目されています。国内回帰は安定した生産供給を確保するための戦略である一方、国際競争力を高めるためには、よりグローバルな視点が必要になるかもしれません。

このように、中小企業の企業立地と海外生産拠点からの国内回帰は、経済環境の変化に伴い、新たな戦略を模索する過渡期にあります。地域社会との連携を深めつつ、グローバルな市場の動向にも目を向ける必要があるでしょう。

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)